両立支援等助成金とは?コース内容や注意点、申請方法を企業向けに解説!
育児や介護と仕事の両立を希望する労働者が増えるなか、こうした労働者の継続就業を支援するため、企業が両立支援の環境整備を行う際に活用できるのが、「両立支援等助成金」です。この記事では、両立支援等助成金のコース内容をはじめ、活用時の注意点や申請方法について解説します。
両立支援等助成金とは

両立支援等助成金とは、労働者の「仕事と家庭の両立」を後押しする企業を支援するための助成金制度です。目的に応じて、いくつかのコースが設けられていることが特徴です。充実した福利厚生制度を運用することが難しい中小企業であっても、「仕事と家庭の両立」を後押しする仕組みを導入しやすくなっています。
「助成金」制度であるため、金融機関からの融資のように返済する必要がない点もメリットといえるでしょう。中小企業の皆さまが資金面での負担を軽減しつつ、従業員に役立つ仕組みを導入できるため、人材の定着・確保に資することが期待されます。
両立支援等助成金の各コース

2025年度の両立支援等助成金制度では、次の6つのコースが用意されています。
- 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース
- 育休中等業務代替支援コース
- 柔軟な働き方選択制度等支援コース
- 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
このうち、「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」以外の5コースの特徴について、詳しく見ていきましょう。
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
出生時両立支援コースは、男性労働者が育児休業を取得したときに受給できるものです。
種別は2つに分けられ、どちらも「育児・介護休業法等に定める雇用環境整備の措置を複数実施すること」、「育児休業取得者の業務代替者の業務見直しに係る規定等を策定し、業務体制の整備を実施すること」等を満たしたうえで、さらに種別ごとの要件を満たすと助成金を申請できます。
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種別 |
種別ごとの主な要件 |
支給額 |
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第1種 |
対象の労働者が子の出生後8週以内に育休を開始(1人目は5日以上、2人目は10日以上、3人目は14日以上) |
1人目:20万円 2・3人目:10万円 |
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第2種 |
下記のいずれかを達成
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60万円 ※申請時にプラチナくるみん認定事業主であれば15万円加算 |
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育児休業等に関する情報公表加算(1~3人目のいずれか1回に限り加算) |
2万円 |
介護離職防止支援コース
介護離職防止支援コースは、労働者が介護休業を取得した場合、もしくは介護両立支援制度(※)を導入・利用した場合などに活用できます。
(※)本助成金における介護両立支援制度:所定外労働の制限制度/時差出勤制度/深夜業の制限制度/短時間勤務制度/介護のための在宅勤務制度/(法を上回る)介護休暇制度/介護のためのフレックスタイム制度/介護サービス費用補助制度
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種別 |
種別ごとの主な要件 |
支給額 |
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介護休業 ※1事業主5人まで |
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対象労働者が介護休業を取得し、なおかつ職場復帰する |
40万円 ※連続15日以上の休業の場合は、60万円 |
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介護両立支援制度 ※1事業主5人まで |
介護両立支援制度を1つ導入し、対象労働者が当該制度を利用する |
20万円(30万円) ※()内は連続60日以上の制度利用の場合 |
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介護両立支援制度を2つ以上導入し、対象労働者が当該制度を1つ利用する |
25万円(40万円) ※()内は連続60日以上の制度利用の場合 |
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業務代替支援 ※1事業主5人まで |
新規雇用 |
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20万円(30万円) ※()内は連続15日以上の制度利用の場合 |
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手当支給等 |
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5万円(10万円) ※()内は連続15日以上の制度利用の場合 |
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3万円 |
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環境整備加算 ※1事業主あたり1回限り加算 |
10万円 |
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育児休業等支援コース
育児休業等支援コースは、スムーズな育児休業の取得・職場復帰をサポートする企業を支援するコースです。
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種別 |
種別ごとの主な要件 |
支給額 |
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育休取得時 |
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30万円 1事業主2回まで(無期雇用労働者・有期雇用労働者 各1回) |
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職場復帰時 |
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30万円 1事業主2回まで(無期雇用労働者・有期雇用労働者 各1回) |
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育児休業等に関する情報公表加算 |
2万円 |
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育休中等業務代替支援コース
育休取得者の代替業務に対応する従業員に手当を支給したり、代替要員を確保したりした場合に活用できるのが、育休中等業務代替支援コースです。
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種別 |
種別ごとの主な要件 |
支給額 |
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手当支給等 (育児休業)※1 |
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①業務体制整備経費:6万円(育児休業期間1か月未満の場合は2万円)労務コンサルティングを外部の専門事業者に委託した場合は20万円 ②業務代替手当:業務代替者に支給した手当の3/4(プラチナくるみん認定事業主は4/5) |
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手当支給等 (短時間勤務)※1 |
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①業務体制整備経費:3万円 労務コンサルティングを外部の専門事業者に委託した場合は20万円 ②業務代替手当:業務代替者に支給した手当の3/4 |
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新規雇用 (育児休業)※1 |
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代替期間に応じた額を支給 最短(7~14日):9万円(プラチナくるみん認定事業主の場合11万円) 最長(6か月~):67.5万円(プラチナくるみん認定事業主の場合は82.5万円) |
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有期雇用労働者加算※2 |
10万円 |
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育児休業等に関する情報公表加算 |
2万円 |
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※1 1事業主1年度につき合計10人まで(くるみん認定を受けた事業主は、令和11年度まで延べ50人を限度に支給。)
※2 対象育児休業取得者/短時間勤務制度利用者が有期雇用労働者の場合に加算されます。(業務代替期間が1か月以上の場合のみ)
柔軟な働き方選択制度等支援コース
以下の2つの場合に助成金が申請できます。
1 以下に記載する「柔軟な働き方選択制度」などを3つ以上導入し、制度利用対象者がそのうち1つを利用開始から6か月間で一定の基準以上利用した場合に申請が可能です。
- フレックスタイム制度または時差出勤制度
- 育児のためのテレワーク等
- 柔軟な働き方を実現するための短時間勤務制度
- 保育サービスの手配及び費用補助
- 養育両立支援休暇制度
2 子の看護等休暇を法を上回る制度として有給化した場合に申請が可能です。
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種別 |
種別ごとの主な要件 |
支給額 |
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柔軟な働き方選択制度 ※1事業主5人まで |
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3つの制度を導入し、対象労働者が制度を利用した場合 |
20万円 |
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4つ以上の制度を導入し、対象労働者が制度を利用した場合 |
25万円 |
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子の看護等休暇制度有給化支援 ※1事業主1回まで |
法で求める内容を上回る有給の子の看護等休暇制度を導入 |
30万円 |
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中学校修了までの子を養育する労働者が利用できるものとした場合の加算※ |
20万円加算 |
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育児休業等に関する情報公表加算※ |
2万円加算 |
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※ 加算のみの受給はできません。
両立支援等助成金を活用するときに注意すべきこと
従業員の労働環境を整備したい場合に非常に役立つ両立支援等助成金制度ですが、活用にあたっては次の2点に注意しなければなりません。
- 事業所単位ではなく事業主単位で支給される
- 従業員の休業や制度利用前に社内制度を整える必要がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
事業所単位ではなく事業主単位で支給される
両立支援等助成金制度は、事業所単位ではなく事業主単位で支給されます。そのため、複数拠点を有している場合は、すべての事業所と連携して進めることが重要です。なお、支給対象となる事業主は主に「中小企業」とされており、以下の条件のいずれかを満たす必要があります。
※資本金等のない事業主については、常時雇用する労働者の数により判定します。
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産業別 |
資本額または出資額の要件 |
常時雇用する労働者数の要件 |
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小売業(飲食業含む) |
5,000万円以下 |
50人以下 |
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サービス業 |
100人以下 |
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卸売業 |
1億円以下 |
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その他 |
3億円以下 |
300人以下 |
※育休中等業務代替支援コース(手当支給等)は、常時雇用する労働者の数が300人以下又は上記の「資本金または出資額以下」の事業主が対象となります。
従業員の休業や制度利用前に社内制度を整える必要がある
両立支援等助成金を受給するためには、従業員が実際に休業や制度を利用する前に、就業規則や労使協定を整えておかなければなりません。育児・介護休業法の改正内容を踏まえ、これらに沿った内容に社内制度を整備していきましょう。
両立支援等助成金の申請方法
両立支援等助成金の申請先は、申請事業主の本社等の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。なお、本社等とは「人事労務管理の機能を有する部署が属する事業所」のことを指すため、登記上の本店とは異なるケースもあります。また、コースごとに申請期限が異なるため注意してください。
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コース種別 |
申請期限 |
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出生時両立支援コース (子育てパパ支援助成金) |
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介護離職防止支援コース |
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育児休業等支援コース |
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育休中等業務代替支援コース |
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柔軟な働き方選択制度等支援コース |
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まとめ
労働者の定着・人材確保には、育児・介護などが発生しても、仕事を続けられるような仕組みを整備する必要があります。優秀な人材を確保・定着させるために、ぜひ両立支援等助成金を活用してみてください。
また、中小企業育児・介護休業等推進支援事業では、仕事と家庭の両立にまつわるセミナーも定期的に開催しています。育児・介護に関する職場環境整備を無料で支援することも可能であるため、ぜひお気軽にご相談ください。
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