産後パパ育休とは?人事担当者が知っておくべき制度概要を解説!
男性従業員が子育てのために取得できる休業制度は複数あるため、「どの制度を、どのような従業員が、いつ取得できるのか」、全体像を把握しきれていない方もいるかもしれません。そこでこの記事では、人事担当者向けに「産後パパ育休」について詳しく解説します。「育児休業」「パパ・ママ育休プラス」との違いについても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
①産後パパ育休とは
「産後パパ育休」は、令和3年の法改正で新たに創設され、令和4年10月から始まった新しい休業制度です。男性の育児休業取得促進を目的に、男性の育児休業取得ニーズが高い子の出生直後の時期に、これまでより柔軟で取得しやすい休業制度として設けられました。
産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に、4週間(28日)を限度に、2回に分けて取得できます。子どもが1歳になるまでに取得できる「育児休業」とは別に取得できることが特徴です。
育児休業についても、令和4年10月から、2回に分けて取得できるようになりました。そのため、「産後パパ育休」と「育児休業」を組み合わせることで、家庭の事情に応じて柔軟に休業することが可能なのです。
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母 |
父 |
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産休 |
産後パパ育休(1回目) (出生+退院時など) |
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仕事 |
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産後パパ育休(2回目) (里帰りから自宅に戻るタイミングなど) |
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育児休業(1回目) |
仕事 |
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仕事 |
育児休業(1回目) |
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育児休業(2回目) |
仕事 |
「産後パパ育休」と「育児休業」の違い

「産後パパ育休」と「育児休業」の違いとしては、次のような点が挙げられます。
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項目 |
産後パパ育休 |
育児休業 |
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対象期間 |
子の出生後8週間以内 |
原則、子の1歳の誕生日の前日まで |
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分割取得の可否 |
2回まで分割可能 |
2回まで分割可能 |
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従業員からの申出期限 |
原則、休業の2週間前まで(※) |
原則、休業の1か月前まで |
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休業中の就業可否 |
労使協定の定めがある場合、労働者が合意した範囲で就業可能 |
原則として就業不可 |
※雇用環境の整備などについて、法を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1か月前までとすることができます。
「産後パパ育休」と「育児休業」がもっとも異なる点は、休業を取得できるタイミングです。産後パパ育休は、子の出生後8週間以内にのみ取得できます。従業員が、産後パパ育休を育児の入り口と位置づけ、育児の大変さや喜びなどを実感することで、その後の育児への関わり方、更なる育児休業の取得や休業後の働き方の見直しにつなげることができるよう、積極的に取得を推奨しましょう。
一方、育児休業制度は1歳未満の子を養育するための長期間取得できる休業制度です。保育所などに入所できない等の場合には1歳6か月まで、それでも入所できない等の場合には再度申し出ることで最大2歳まで取得できます。「産後パパ育休」と「育児休業」は、家庭のニーズに応じて併用して取得できますので、どちらか一方しか取らせないという取扱いとならないよう留意しましょう。
「産後パパ育休」と「パパ・ママ育休プラス」の違い
「産後パパ育休」と混同しやすい「パパ・ママ育休プラス」について、従業員から質問されたことがある人事担当の方もいるのではないでしょうか。どちらも男性の育児休業取得促進のために設けられた制度ですが、「産後パパ育休」と「パパ・ママ育休プラス」の違いは、次のとおりです。
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項目 |
産後パパ育休 |
パパ・ママ育休プラス |
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趣旨 |
子の出生直後の期間における男性の休業取得のニーズの高さに合わせ、短期間での分割取得など柔軟な取得を可能とする、従来の育児休業とは別に設けられた休業制度 |
配偶者が休業からスムーズに復職できるように、両親がともに育児休業を取得する場合に、子が1歳2か月までの期間で育児休業を取得できる制度 |
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対象期間 |
子の出生後8週間以内 |
子が1歳2か月までの間で1年間育児休業を取得可
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育児休業は、保育所に入れないなどの事情がないと、1歳以降の延長ができません。パパ・ママ育休プラスは、両親がともに育児休業を取得していれば、特段の事情がなくても、子が1歳2か月になるまで休業を取得できることがポイントです。
ただし、パパ・ママ育休プラスを利用しても、父母それぞれの育児休業取得可能期間が「1年間(産後パパ育休の期間、出生日以後の産前・産後休業期間を含む)」であることに変わりません。あくまでも父母が育休期間をずらすことで、子が1歳2か月に達するまで休業できるのがパパ・ママ育休プラスです。
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母 |
父 |
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産休 |
産後パパ育休(1回目) |
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仕事 |
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産後パパ育休(2回目) |
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育児休業 |
仕事 |
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育児休業 |
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仕事 |
②産後パパ育休のポイント3つ
従業員から質問されることが多いと予想される、産後パパ育休のポイントを3つ紹介します。
- 分割での取得も可能
- 休業中の就業も可能
- 休業中は社会保険料が免除される
分割での取得も可能
産後パパ育休は、子どもの出生後8週間以内に、合計4週間(28日間)まで、2回に分けて取得できます。比較的短期間に複数回休業することになるため、上司・同僚の理解を深めておくことが重要でしょう。
休業中の就業も可能
休業中は就業しないことが原則ですが、「育児休業」と異なり、「産後パパ育休」は、労使協定の定めがあれば、一時的・臨時的な就業だけではなく、従業員が合意した範囲で就業できることが特徴です。
たとえば子の出生の時期と繁忙期が重なり、従業員自らが希望した場合は、あらかじめ決めた範囲で業務に従事してもよいでしょう。
ただし、産後パパ育休中の就業について、事業主側から就業するよう働きかけたり、労働者の意に反するような取扱いをしたりしてはいけません。
また、休業中の就労日数・時間については上限があり、下記の要件を満たす必要があります。
- 休業中の所定労働日数・所定労働時間の半分以下
- 休業開始日・終了日は当該日の所定労働時間未満
就業を希望する従業員がいる場合は、この上限を超えないように調整する必要があります。
また、就業日数によっては、出生時育児休業給付金の支給の有無に影響が出てきますので(就業日数が一定の水準以下の場合が支給対象。産後パパ育休を28日間取得する場合は、就業日数が10日以内)、この点も従業員に丁寧に説明することが必要です。
休業中は社会保険料が免除される
産後パパ育休期間中は、育児休業と同じく、社会保険料の支払いが免除されます。具体的な免除期間・要件は次のとおりです。
- 月の末日が休業中である場合
- 同じ月中に休業を開始・終了した場合で、その日数が14日以上である場合
(賞与の社会保険料) - 賞与支給月の末日を含み連続1か月超の休業を取得した場合
産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に2回まで分割可能です。そのため、社会保険料の免除を受けられるかどうかの判断が少し難しいかもしれません。とくに同一月内に14日未満の休業を取得する場合(月末を休んでいない場合)は、社会保険料を納める必要があることを従業員に伝えておいたほうがよいでしょう。
また、産後パパ育休中に就業する場合には、同一月内の社会保険料免除の要件である「14日以上」の日数に就業した日は含みませんので、注意が必要です。
③産後パパ育休の取得に際して人事担当者が行うべきこと

産後パパ育休の取得に際して人事担当者が行うべきことは、次の2つです。
- 産後パパ育休の制度を整備し周知する
- 従業員への個別の周知・取得の意向確認を行う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
産後パパ育休の制度を整備し周知する
育児休業、産後パパ育休の制度を社内制度として整備し(就業規則、育児・介護休業等に関する規則)、全従業員に周知しましょう。規則には以下の内容を規定し、分かりやすいリーフレットなどで従業員に周知するとよいでしょう。
- 産後パパ育休を取得できる対象者
- 産後パパ育休の期間
- 産後パパ育休の申出等の手続き
- 産後パパ育休中の就業(就業できる制度としている場合)
- 産後パパ育休中の賃金の有無(休業中に通常とは異なる賃金が支払われる場合、その決定・計算・支払方法)
従業員への個別の周知・取得の意向確認を行う
令和4年4月より、妊娠・出産の申出をした従業員に対して、育児休業、産後パパ育休の制度について個別に周知し、取得の意向確認を行うことが義務付けられました。
育休制度は複雑であり、「産後パパ育休」と「育児休業」をいつ、どのように取得したらよいか、判断に迷っている従業員もいるでしょう。そのため、事業主・人事担当者は、従業員への制度説明・取得意向確認を個別に実施しましょう。この際、休業を取得する従業員だけではなく、上司・同僚への制度説明を通じて、育休取得への理解やハラスメント対策を図ることも重要です。
④産後パパ育休の申出・取得方法

ここからは人事担当者向けに、産後パパ育休の申出・取得方法を紹介します。まず前提として、産後パパ育休を取得するには従業員からの申出が必要です。このとき用いる申出書のフォーマットは、会社側で用意します。厚生労働省が作成しているフォーマットを活用しましょう。
厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」に「社内様式例」が記載されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html
申出書の主な記載内容は次のとおりです。
- 申出年月日
- 従業員の氏名
- 子どもの氏名・生年月日(生まれていない場合は出産予定日)
- 本人との続柄
- 休業開始・休業終了予定日
先述したとおり、産後パパ育休の申出期限は原則として取得予定日の2週間前までとされています。しかし、もし出産予定日より前に生まれた場合は、取得予定日の1週間前までの申出で構わないとされています。
従業員から産後パパ育休の申出があったら、人事担当者は次の手続きを進めます。
- 雇用保険の「出生時育児休業給付金」の給付を受けるための受給資格確認・支給申請(ハローワーク)
- 社会保険料免除の手続き(年金事務所)
はじめて手続きする場合は、具体的な手続き方法について、ハローワークや年金事務所などに相談しておくとよいでしょう。
従業員からの申出に対し、事業主は次の事項を記載した通知書を速やかに交付しなければならないことにも留意しましょう。
- 産後パパ育休の申出を受けた旨
- 産後パパ育休開始予定日及び終了予定日
- 産後パパ育休の申出を拒む場合にはその旨と理由
⑤まとめ
「産後パパ育休」は比較的新しい休業制度であるため、存在を知らない従業員もいるかもしれません。また、「産後パパ育休」と「育児休業」を併用すると、複数回にわたって休業することになるため、上司やまわりの同僚の理解も必要です。
「産後パパ育休」「育児休業」の制度を利用しやすい職場にするためにも、これから子育てをする従業員への周知はもちろん、上司や同僚などへの制度説明や理解促進も意識してみてください。中小企業育児・介護休業等推進支援事業では、仕事と育児の両立に関するセミナーを定期開催しているほか、専門家による無料支援を行っています。従業員が育休を利用しやすい職場環境を整備したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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